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2003年の総選挙:私なりの感想
有道 出人 (あるどう でびと)著
2003年11月12日発行

 これはもはやオールドニュースですが、先日の選挙について、私なりの観察記録を書きたいと思います。参政権のある新日本人としても私の視点は参考にならないかもしれないが、どうぞ。これはジャパンタイムズの記事にもなりました

 目次はこの通り:
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●今回の選挙はなぜ大事だろうか。
 1)不賛成派はひとつの政党に固まることができました
 2)戦後で始めて「マニフェスト」
 3)今回は北海道さえステータス・クォ(status quo 現状)を納得していないので、特に自民反感の標

●その他の気付いたこと
 1)ビッグマネーは必ず優勝ではない
 2)道4区(札幌手稲区、小樽市)の自民党損失(佐藤 静雄)
 3)道5区(札幌市厚別区、江別市)の自民党厳選(町村 信孝)

●結論

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 ●何が起きた?
 皆様は選挙の結果は既にご存知だと思うので、繰り返さないようにします。
 でも、今回の選挙は非常に大事だったと言えると思います。

 ●なぜ今回の選挙は大事だろうか。
 1)不賛成派は政党に固まることができました。

 新聞は「2大政党時代へ」を報道しています。同意です。民主党の177席取得は故社会党の後、始めて「自民党の不賛成派」の政党はここまで固まったのです。戦後からもちろん、それぞれの自民党以外の政党もあったが、たいてい(特に社会党の解散後)有権者のイメージは「選択は自民党 もしくは 反自民党」だったでしょう。でも、今回では、特に、日本は『マチューア』(『成熟した』、つまり経済大国となり国家総生産の成長率がが先進国なみになってから)経済になってから、始めて「自民党 対 民主党」になりました。

 これは単なる「民主党と自由党が合併して『ユナイテッド・フロント』を見せること(つまり統一した政党として主な選挙区に候補者を出馬させ自民党と競争力)だけではないと思います。最も大事なことは

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 2)戦後で始めて、「マニフェスト」

 これは画期的なことだと思います。なぜか今までの経験を逆らいました。

 戦後の日本の政界を勉強した(私は学士号はコーネル大学政治学部からなので、結構興味深いです)が、1987年から(竹下政権から金丸・リクルート不祥事、それに極短期間の宇野政権云々・・・)本格的に我が国の選挙制度などを国内から観察しております。それぞれの政党の生き死に(新進党、女性党、スポーツ平和党、愛酢党、UFO党)の選挙広報も愛読し、キャンペーンの結果は参政権がなくても毎回見ました。旧新潟3区(田中角栄の陣地)にある長岡市にも一年間暮らして、どうやって自民党がキャンペーンするのかはたいへん面白く観察しました。結論は、欧米の民主主義制度と比較した上、日本の著しい特徴は「有権者は政党から政策提案を要求せず『なんとなく』のみで投票している。これは民主主義の骨折なのか」となってしまいました。

 でも、振り返ってみれば奇妙ではないかもしれません。自民党が永年「政党チョイスは要らない政界」を保った原因は、永年経済的急成長率だと思います(たいてい世界中の有権者はその政権を「ノー・タッチ」)。ところが、バブル崩壊後でもそんなに変わらなかったと思いました。90年代中間で自民党以外な政党が納まってきた時代後、また「戦後の正常通り」に戻りました。なぜ細川政権と村山政権が社会党の解散に至り、また自民党に新ためて政権を握ったのか、この先進国のうち唯一の1政党のみで政界がある国の理由・ダイナミックは面白かったです。

 しかし、普通の有権者にとってそんなに面白くなかったと思います。かえって、投票率はじりじりと低下しつつあり、益々国民が「どうせ変わらないっしょ」と飽きて厭世感になったと感じます。2000年に帰化後、最初の選挙に参政した私ももちろん後天的な日本人と同様に迷いました。「当選すると、この政党ましてやこの候補者は何をするのか」。選挙広報以外、政策提案はサウンドトラックのスローガンに過ぎなかったのです。各候補者の対話や討論なし。公論が新聞のみからピックアップ。なぜ国民は各政党から、特に地方の自治体選挙では候補者から、時事問題についての声明を要求しないのか、ずっと不思議に思いました。(今年、原因は分かりました。選挙期間の政治的発言を制限する法律にもよります。随筆したレポートは英文だが、どうぞ http://www.debito.org/nanporo2003elections.html ) したがって、政権公約がないので、有権者は当然困惑します。

 今回の選挙は違いました。ようやく、民主党はじっくりと自分の「マニフェスト」を発行しました。

 あくまでも「政治はイメージ」である。これで民主党は真面目な政党の「イメージ」がはっきりし、「この期間までにこれを果たす」38ページの提案がこれくらい危機のある日本の経済情勢に出ました。皆様がこの政党または提案に対して賛成するか、反対するか、は自分個人の選択だが、少なくともこれで具体的なチョイスが与えられました。

 それはたいへんヘルシーな現象だったと思います。他の政党は自分のマニフェストを発行しなければいけなかったので、「これに対して参政するか、反対するか」を断言出来ました。自民党の場合、首相は写真付きの12ページ「小泉改革宣言」も発行したが、顕著なのは比較的に曖昧でした。詳しい提案が欲しければ、別の21ページの写真が付いていない読みにくい「小泉改革宣言」を自民党の事務所からもらわなければならなかったです。要は、自民党は自分の宣言を交付するのへは慣れていないので、ちょっと準備不足だったと感じました。今回は民主党が最先端でした。

 それで、公約内容は私にとって決め手でした。
 「小泉改革宣言」(写真付き)の中、宣言2は
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 国民の安全を守ります
 ●5年以内に、治安を回復します
 5年で治安の危機的現状を脱し、5年間で不法外国人を半減します。
(後略)
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 この宣言の●最初●に出したのは「犯罪対策」ではなく「外国人対策」でした。前述の件ですが、およそ98%少々の国内犯罪は日本人に犯されているのに( http://www.debito.org/crimestats.html) (http://www.debito.org/futouhanzaitaisaku.html )。 しかも、いくら提案者が「不法外国人」と弁解しても、私が詳しい宣言を読んでも、どうやって合法である、不法であると見分けるのでしょうか。「外人ハラスメント」(つまり、外見が外国人のみで不審者だと判断され、警察に捕まり職務質問などを行うこと)を政策ではどうやって避けるのは詳しく考えておりません。私は何回も相当な理由なしで警察官に捕まれたので (http://www.debito.org/chitosecopcheckpoint.html) 、適格に実施されなければ、私と合法の外国人、かつ、外見的にアジア系ではない日本人は困ります。

 (ちなみに、法務省入国管理局2003出版、実は不法滞在者は1993年から毎年もれなく減っています (http://www.debito.org/crimestats.html#visa) 。政党の犯罪現状観察が誤っているので、宣言は外人バッシングと感じてしまいます)

 比較的に、民主党のマニフェストはそうしていません。37ページ、宣言5の2の(1)の中、「犯罪に厳しく対処し、安全な地域を取り戻します」の見出しで、●一回も●「外国人犯罪」が書いてありません。かえって、「犯罪対処」を強調しています。その通りだと思います。人ではなく、犯人と犯罪をターゲティングしましょう。

 しかも、マニフェストの36ページ、宣言4の4の(4)の中、「外国籍の人も希望により住民票に記載します」。私は先週の土曜、朝日新聞の「私の視点」欄では住民票問題について書きました(記事はこちらです http://www.debito.org/asahi110803.jpg )
ので、大変関心があります。実は民主党は選挙の数カ月前に「どんな社会問題があるのか」と公募して、私の永住者の知り合いから意見を参考にして採用していただきました。だから、その面で非常にオープンマインドだと思います。宣言に含んで感謝いたします。(私は民主党の代表ではありません。個人として話しいる、と言っておきますが。)

 さて、私のみではなく、他の有権者の投票パターンを見ましょう。
 マスコミではよく民主党の「躍進」について報道したので、あまり報道されなかった私なりの分析はどうぞ。

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 3)今回は北海道さえステータス・クォ(status quo 現状)を納得していないので、特に自民反感の標
 
 皆様がご存知の通りだと思うが、たいてい、ルーラル(田舎)の選挙区では自民党が当選、アーバン(市街)の選挙区では自民党ではない方が当選する傾向があります。今回の当選図も見ると、やはり整備工事に依存する四国、中国と北陸は自民党の圧勝でセーフシートです。

 しかし、人口の密度の一番低い田舎の北海道はそうならなかったのです。

 北海道開発局などの解散と一般的に本土に依存する経済状況などをめぐって、現在は沖縄県よりも、北海道は全国的にひとり当たりの収入にとって一番貧しい県になってしまいました。よって道民が全国の不況のなかで一番痛んでいると主張できると思います。その現象は選挙に現れたと思います。

 確かに、道内の12選挙区のうち、片田舎の3席(道7区、11区、12区:道東)は自民党の楽勝でした。

 でも、4席(1区、2区、4区(札幌・小樽)と8区(函館))は民主党の楽勝でした。

 残りの5席は自民党と民主党の厳選でした。3区(札幌)9区(苫小牧)と10区(岩見沢プラス田舎)の3席は民主党に。後の2席(5区(札幌厚別区と江別市)と6区(旭川)は自民党に。

 比例区では、民主党は8席から11席増加、自民党は8席を確保したが、ぎりぎりでした。したがって、北海道は「ルーラル」らしく投票しませんでした。かえって、東京都、大阪府、愛知県、と福岡市(自民4席損失、民主へ)のアーバンな傾向でした。決して人口の密度と経済発展が原因と言えないので、自民党を信用せず民主をもっと信用と言えるかもしれません。

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●その他の気付いたこと

 殆どマスコミで報道された解説以外は:

1)ビッグマネーは必ず優勝ではない

 自民党はなぜよくリッチなキャンペーンができるのは、もちろん基金調達者がお上手だが、元々には財政的支援がありました。ご存知かどうか分かりませんが、戦争直後から数年間の日本は共産主義になる危険性があった、とSCAPが判断しました。よってアメリカが「M資金」を用意して自民党となった政党を金銭的に援助して選挙させした。1950年代後半に全額が岸首相に引き渡されたので、まだ援助になっているのではないかと思います。(出典:高野はじめ著「M資金 知られざる地下金融の世界」日本経済新聞社1980年出版 と http://www.jpri.org/WPapers/wp11.html (英文))とにもかくにも、資金が不足しない自民党は殆どの50年間で当選となり、継続は力となりまいた。よって自民党は非常にプロらしいスタイルができました。

 例えば、選挙日の前日、各政党のマニフェストを空知郡南幌町(人口1万人)の事務所からもらおうとしました。受け付けはこうなりました。

 民主党のオフィスでは、スタッフ1人のみで、疲れたそうなお爺さんが受付で、マニフェストのみを渡してペコペコ。

 自民党のオフィスでは、スタッフ6名のお爺さん、お婆さんがいて、「どうぞお座り!お茶は?ミカンもどうぞ!」でした。大量の宣伝材料を渡してくれて(ただ、その年令では『マニフェスト』という言葉はあんまり通じなかった)、車まで見送ってくました。やはり、仕方がなく、いい後方の政党についてイメージとなりました。

 しかし、今回は挨拶のみは足りなかったようです。数年間の自民党のスローガン「任せて任せて北海道!」(1996年、橋本政権)は納得しなかった人が多かったに違いません。南幌にある選挙区(10区)は民主党にいきました。

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2)道4区(札幌手稲区、小樽市)の自民党損失

 自民党の佐藤 静雄氏は厳しい落選になりました(選挙区当選も不可)。この方は非常に興味深く観察しました。なぜなら小樽の外国人お断りの問題が表面化した時(1999〜)、2000年の総選挙の「政党調査」を行いました。「選挙区に起きる人種差別はどうしますか」を聞いて、小樽市の各候補者は本格的に答えました(http://www.debito.org/seitouchousa.html) 。ただ、佐藤 静雄氏のみ「誤解が生じるので、選挙後に答えます」と言いました。(http://www.debito.org/otarudoshin000615.GIF) それでも、佐藤 静雄氏が当選しました。今回は民主党にいったので、未だに小樽市内と道内などに起きている人種差別を撤廃する法制化を期待しております。 (http://www.debito.org/roguesgallery.html) (http://www.debito.org/nihongotimeline.html)

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3)道5区(札幌市厚別区、江別市)の自民党厳選

 5区は私の勤め先の選挙区だが、代表する議員は小泉内閣前文部大臣の町村 信孝氏です。私と絆はないが、町村氏は私の朝日新聞の「私の視点」欄(今年6月2日 http://www.debito.org/asahi060203.jpg ) を読んだようです。その後、彼の秘書から電話があり、「国際協力 その現状と課題」(2003年、政経調査会出版)を送付したいと言いました。どうぞ、と私はと言ったが、その単行本と一緒に4万5000円の請求書もが届いてきました。

 私にとって、これはまるでウェーターが「スープと一緒にもう少しパンはいかがですか」と言い、支払う時に追加のパンが別途になったと発見する感じでした。

 同様に自分のサポーターを待遇しています。選挙日候補者が勝利する際、各選挙事務所では候補者が出て「バンザイ」とのお祝となります。ただ、町村氏のみの場合、東京から帰ってこなかったのです。サポーター方々は代表の代表をバンザイしなければいけませんでした。

 代表は選挙区の中の方々をこうやって待遇するなら、厳選となるだろうと思います。

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●結論

 要は、この選挙は我が国日本にとって非常にヘルシーな出来事が多かったです。マニフェストがこれからの選挙で発行となると、有権者はもっと「インフォームド・コンセント」で投票できるかもしれません。ただ、このマニフェストが実現にならなければ、イメージが「また空約束かぁ」となってしまい、厭世感に戻るだろうと思います。民主党がこの面では魁けたと思うので、ぜひ目標を果たしてほしい。少なくとも、今回の選挙では実施する力が強くなったと言えると思います。

 このチャンスを失わないように、お願いします。良くても悪くても、いずれに前例となると思います。

 以上です。宜しくお願い申し上げます。

有道 出人(あるどう でびと)
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2003年11月12日著
ENDS

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