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「外国人犯罪」は明らかに大袈裟に報道された。
しかし小泉首相新内閣は不当な「対策」の段取りへ
有道 出人(あるどう でびと)著
2003年10月7日公開(転送歓迎)
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サマリー
政治の動き
2003年9月16日、東京テレビで自民党総裁選に出馬した4人が討論しました。英字ニュースウェブサイトJapan
Todayによると、2003年9月18日テレビ東京放送で皆が「外国人犯罪について」の立場を提供しました。小泉氏:(原稿は英語、翻訳有道出人)「"If
foreign workers are allowed to come in at a time of high unemployment, the public
will become increasingly worried about stability and an increase in crimes,"」(失業率が高い時に外国人労働者が入国すると、日本社会は安保と犯罪の増加についての心配は高まる)。同サイトによると、藤井氏は地方労働不足に対し外国人労働者の入国を真剣に討論をしないといけない、高村立候補は入国条件は日本語の能力にすべき、亀井氏は外国人犯罪の「crackdown」(弾圧)を勧めたようです。つまり、政治改革や経済促進並びに「外国人犯罪対策」が重視されるようになりました。
http://www.japantoday.com/e/?content=news&cat=9&id=273002
同月23日小泉新内閣の発足の日で、NHKと読売新聞と産経新聞の報道によると、新政策の発表で野沢法務大臣(「首相から『日本を世界一安全な国に戻してくれ』と特命を受けた」)、江藤亀井派の国家公安委員長(「治安関係省庁と連携を取りながら、外国人、少年犯罪の強化を図りたい」)と麻生総務大臣も外国人犯罪に言及しました。要は、外国人犯罪対策の切迫感があります。
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では、外国人犯罪の統計を分析しましょう
2003年9月、警察庁が発行した(「来日外国人犯罪の現状」 http://www.npa.go.jp
にある)最新データによると、外国人犯罪の検挙数(つまり犯罪のかず)と人員数(つまり犯人のかず)は2000年と2001年に一旦低減少してから、2002年に増加しました。早く参考のために
http://www.debito.org/crimestats.html
しかし、この報告のタイトルの通り、外国人犯罪のみが載っています。外国人と外国人の比較に過ぎず、日本人の犯罪率との比較がありません。もし、きちんとそう比べて分析してくれると、以降の現象を発見すると思います:
●外国人の数も増加しています。法務省のウェブサイト(http://www.moj.go.jp) によると、2002年3月、登録された外国人住民(つまり、ビザの有効期限1年間以上から永住者までの外国人)は1,778,462人でした。2002年末までには1,851,758人(4%増、再び新記録)でした。人が増えると犯人も増える可能性があります。日本人の人口はほぼ横這いなので、日本人の犯罪率の方が外国人よりも顕著に増加中です。
●日本人の犯罪も急増中という証拠はジャパンタイムズ2003年9月23日にありました。国籍と関係なく全国の犯罪検挙数は285万件です。これは戦後最悪の記録です。同記事によると、外国人の検挙数は1。39%でした。登録している外国人の人口は1。5%なので、日本人の率より低いです。従って、犯罪があったら、98。61%の確率で、犯人が日本人ということになるでしょう。
●しかも、「犯罪インフレ」があります。警察庁が報告に載せた犯罪は「刑法犯」(つまりひったくり、不法侵入、強盗、殺人など)と「特別法犯」(つまりビザ違反と麻薬犯罪)に分けられて、検挙数の4分の1以上が「特別法犯」です。外国人の殆どの「特別法犯」はビザ違反です。しかし、日本人は国民なので、ビザ違反はできません。この犯罪は外国人だけが犯せるので、日本人も外国人が同様に犯せる犯罪を比べないと現実を反映しない結果がでます。ビザ違反を除けば、外国人の犯罪率は1%少々に下落します。
●その「ビザ違反者」の件ですが、「多い、増加中」というイメージが強いでしょう。しかし、法務省入国管理局(2003年版)の「IMMIGRATION
ルールを守って国際化」というパンフレットによると、1993年から2003年1月現在に至り毎年、モレナク「外国人不法残留者」が減少しました。それはニュースになりませんか。
http://www.debito.org/crimestats.html#visa
●「外国人」の定義ですが、たいてい政府は「登録者」の数に例えられて、日本人口の1。5%と言われています。しかし、もし登録していない外国人(つまり1年間未満のビザのある人:即ち観光客、文化ビザ、発展途上国から来た外国人など)も含めれば、前述の保留された朝日新聞の記事を書いた記者によると外国人の人口はもちろん増加します。(一日だけでもでも出入国の人はその統計にも含まれるので、具体的にどれくらいは分かりませんが)
つまり、登録していない数を加えて外国人数と日本人と同様に犯している犯罪件数のみを比較すれば、どれくらい非科学的な根拠でこの「外国人犯罪急増中、対策が必要」の警察庁、それぞれの政治家ましてや新内閣が助長しているのかが明らかになります。
いささか脱線になりますが、2003年9月27日に、参議院議員福島瑞穂氏(社民党、神奈川)が東京都清泉女子大学で行ったスピーチの質疑応答の際、私はこの「外人バッシング」の問題を挙げました。議員は既にどれくらい政府が大袈裟に統計が曲解され、どれくらい外国人住民に対し不当な対応になっているのかは認識しています。しかし、議員の見解はそれほど報道されておりません。かえって、警察庁が報告する「外国人犯罪急増」の方が見出しになります。結果的にようやくこの内閣で政策まで固まるようになります。
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警察庁のこの「外人バッシング」の動機
日本はよく「我が国は長い間鎖国し、島国であり外国人に慣れていないのでこうなるよ」と国民性によく弁解します。私は日本人はそれほど歴史の虜(とりこ)ではないと思うので、原因はエコノミクスだと思います。
以前、私は警察庁が1999年5月に創立した「国際化対策委員会」について話しました。「来日外国人犯罪の現状(平成12年中)第2章 来日外国人犯罪対策」によると、この委員会の目的は「来日外国人犯罪に係わる諸対策及び国際情勢に的確に対応する諸対策の推進を図るため」。なぜこの委員会は「国際化」を問題化しているのか(かえって『外国人犯罪対策』ではない)は分からないが、それは措きましょう。いずれにこの委員会は前述の「不良外国人に注意」などのビラを作成する責任があります。
http://www.debito.org/chitosecopcheckpoint.html#taisakuiinkai
これでエコノミクス。万国共通だが、公務員の部の一つの目的は自分の予算を正当化することです。もし「外国人犯罪が急増」を何度も繰り返し報道して、反論やバランスのある分析が出なければ、社会の恐怖を煽ります。結果はがっぽりとお金が出てきます。恐怖が融資に換算されると疑うなら、どうぞブッシュ政権の「反テロ措置」のあり方を研修して下さい。もしくは2002年のワールドカップの「反フーリガン措置」を振り返って下さい。(特に札幌にあったイギリス対アルゼンチンの試合の際、本州から警察官3000人を1週間導入したり、フーリガンを留置するためのフェリー3隻を借りたりして、どれくらいの予算を正当化ができましたか。従って、恐怖はおカネになります。
http://www.debito.org/worldcup2002.html
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外国人は「ソフトターゲット」である
実は、社会問題は外国人に擦り付けやすいと思います。現代の日本では犯罪が起きれば、犯人が見付かる率は20%に落ちました。犯人は外国人か日本人であるかは分からないが、最近「このやり方は中国人みたい」が多くなりつつあります。(参考:9月中旬、私の友人が北海道支笏湖で車上狙いで被害に遭った。犯人を見付けなかったのに捜査した警察官はすぐ「中国人だろ」と言った)
これも「インフレ」だと言えるかもしれないが、いずれにせよ日本人犯罪と外国人犯罪の社会待遇は全然違うと思います。「日本人がやった」と言ったら、社会の憤慨を招く可能性があり、「警察官、保安して!しっかり犯人を捕まって!」が思われがちでしょう。しかし、「犯人が外国人」と言ったら、「外国人は日本人と違うからこんな極悪な犯罪は予想しにくい。しかもどうせ我が国に犯罪しに来るなら、こっちに来るんじゃない。早く我が社会のために追放しよう。」しかし、こうやって国民を強制送還できません。しかも、外国人の犯罪は精神的にももっと注目を得ると思います。日本社会は数年間の不況を耐えていて、やがて悲嘆・悲惨・厭世感などによって他人財産の敬意が崩れてつつあり、警察庁はこの犯罪の波を99%の犯人から1%の目立つ犯人に擦り付けるのはラクでしょう。
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結論
正直に申し上げますと、犯罪対策の必要性が論じやすいと思います。的確な政策を作成したうえ、警察官を増加してもっと取り締まりしてもいい場合がいっぱい考えられます。
しかし、今までの警察庁の「外人バッシング」及び「外人ターゲティング」は非常に随意的だったと思います。私はよく外見のみが不審者の理由で人を捕まってハラスメントを目撃かつ経験したことがあります(2002年新千歳空港で警察官の違法停止と職務質問
http://www.debito.org/chitosecopcheckpoint.html
) よって、これからの内閣の「外国人犯罪対策」について期待を持たないのです。
いい政策には常識が必要不可欠です。が、外国人犯罪の面で今までの我が国ニッポンには常識が欠けていると思います。一回も、「外国人も日本国住民である、しかも隣人である」という政府の発表は見たことはございません。一回も、「この不法外国人捜査や取り締まりは『人種プロファイリング』をこうやって避ける」という微妙な対策を聞いたことはございません。一回も、「外国人は平均的に日本人よりも犯罪を犯していないので、圧倒的に普通の外国人は犯人ではないので心配は不要」という通達はございません。ましてや、一回も、「すみません、私が参考にしたデータは間違ったので、失言しました。私は外国人住民に迷惑をかけたことをお詫びして発言を撤去します」を言ったハイレベルの政治家や警察官は見かけたことはございません。
でも、これからの「対策」はこのような方々の立場を強めます。
最後に、読者の皆様にお願いします。これから真実を知る国民としてデータもっと分析をして、公正を期した報道をしましょう。疑問を持って「この政策をするのはいいのか」と公に挙げましょう。そうしないと、「外国人犯罪の対策」は「外国人対策」に固まってしまい、「外国人お断り」などの人権侵害の動きを助長し、差別撤廃法は更に制定することが無理になってしまいます。既に国際社会日本で、他文化・習慣・外見・身元の『共生』よりも『強制』になってしまうと思います。
今が旬。宜しくお願い致します。
有道出人 著
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debito@debito.org
2003年10月7日発行
転送歓迎
ENDS