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「外国人犯罪」は明らかに大袈裟に報道された。
しかし小泉首相新内閣は不当な「対策」の段取りへ

有道 出人(あるどう でびと)著
2003年10月7日公開(転送歓迎)
http://www.debito.org, debito@debito.org

サマリー


 数ヵ年をかけて日本のマスコミを傍聴すると、日本は「外国人犯罪急増」によって社会的安定性には危機があると解釈せざるを得ません。しかし、検挙数としては外国人犯罪が極めて少ないのは事実であり、しかも日本人の犯罪率と比較してみたら外国人犯罪率は日本人の犯罪率より低いのです。にもかかわらず、警察庁の数カ年の「外人バッシング」は社会的に恐怖感を煽り与党レベルまで影響しました。2003年9月末、小泉首相新内閣は発足の当日、大臣3名も「外国人犯罪」について言及し、国家公安委員長小野清美氏は「外国人犯罪対策」を軸にしました。今まで警察庁の外国人に対する独断的な防犯執行方法を鑑みると、この「対策」の段取りは具体化するにつれ社会には大きな危険性があると思います。21世紀の国際社会日本にとって必要不可欠な「人種差別」または「外見・身元差別」を禁止し終了させる法制化はたいへん難しくなります。

 このエッセーで私はもっと報道の公平さを招きたく、かつ、日本の国際住民の人権擁護の不作為及び人権侵害の尚更の可能性を牽制させていただきたいと思います。




 (この時点で、私のエッセーをお読みになる方々にお詫びします。これから書くことは以前何回も申し上げたことがあります。ただ、今回は単なるまとまりではなく、新しいデータが含まれております。この問題について初耳の方と長い間関心を持つ方にもアピールをしたいと思います。宜しくお願い致します。)

 我が国日本では行政官と立法府のレベルではいわゆる「外人バッシング」は新なことではございません。例えば、2000年4月9日、東京都知事石原氏は有名な「三国人スピーチ」のなか、練摩陸上自衛隊へ「不法入国した多くの三国人・外国人が非常に凶悪な犯罪を繰り返している。(中略)すごく大きな災害が起きた時には大きな騒擾事件すらですね、想定される(中略)、そういう時に皆さんに出動願って、災害の救急だけではなしに、やはり治安の維持を」を発言しました。2003年7月11日、自民党の江藤亀井派の江藤隆美会長は「どろぼうやら、人殺しやらばかりしているやつらで、100万人日本にはいる。新宿の歌舞伎町は第三国人が支配する無法地帯になった。」同日に、当時の小泉内閣の国家公安委員長谷垣氏は、長崎市にあった極悪な少年犯罪についての話のついで、「治安悪化の代表として、外国人犯罪や少年犯罪が挙げられる。例えば在日ブラジル人の少年による犯罪がかなり顕著な面がある」。しかも2002年のワールドカップが迫る際、宮城県議会政治家今野隆吉氏は2001年6月29日第51回定例会で「異常な雰囲気に包まれて内外人レイプによる不本意な赤ちゃん出産までが問題になっております」。
 (参考のウェブサイト:)
http://www.debito.org/nihonnoarubekisugata.html
http://www.debito.org/hiyorimishugi.html
http://www.debito.org/ishiharahikokusaika.html
http://www.2002rifu.net/problem/prb-hooligan2.html

 近日このトピックは再流行の気配にあります。2003年6月の福岡で家族一家が中国人の容疑者に殺害され、全国的にショックが受けられました。よって最近のマスコミでは「外国人犯罪」についてのニュースや特集番組が多くなりました。例えば、2003年9月16日、夜9時から11時までみのもんた氏がホストした日本テレビの外国人犯罪特集番組は、外国人犯罪でナンバーワンの地域の新宿の屋根から全国的に放送されました。ルポとしてカメラは警察と一緒に行って暴走族や麻薬問題についても報道し、外国人犯罪(ビザ違反、麻薬、不法侵入など)も出ました。検挙数においては外国人の犯罪率は1。39%(Japan Times, September 23, 2003, pg 2)に過ぎないものの、本番組のおよそ放送時間の20%は外国人犯罪に捧げられました。そして、外国人犯罪の撮影(5回くらい)の後、必ず石原都知事が出てきて、「中国人の犯罪」の残酷さと「警察官の増加の必要性」についてコメントをしました。

 なぜここまで日本のマスコミの不均等な報道を許せるようになったかと言うと、警察庁の定期的な「外国人犯罪の状況」についての報告だと思います。2000年からおよそ6ヶ月毎に、警察庁はホームページ (http://www.npa.go.jp) に「来日外国人犯罪の現状」を提供しマスコミにアップデートを報道しています(但し、外国人の犯罪人員数と検挙数が低下する場合、例えば2001年、はそれほどニュースにならなかった傾向にある。数が増加のみがいい見出しとなるであろう)。結果は、日本社会は新たに「外国人犯罪の恐怖シャワー」を浴びせられます。この緊張を維持するために、それぞれの地域警察署は「来日不良外国人によるひったくりが多発」や「不良外国人に注意」や「来日外国人犯罪の特徴:犯罪被害に遭わないために」のポスターやチラシやハンドブックを発行し、銀行のキャッシュコーナーや地下鉄と国鉄の駅に掲示してもらいます。
http://www.debito.org/TheCommunity/communityissues.html#police
http://www.debito.org/TheCommunity/shizuokakeisatsuhandbook.html

 この「外人バッシング」はオフィシャルなレベルにあるので社会的に信用性が深まりました。マスコミがそれほど警察庁からの統計を分析せず視聴者も鵜呑みの傾向が強まった気がします。この波に乗って防犯システムが流行り、ミワロック(株)も2000年より「外国人窃盗団」を防止するロックも発売し始めました。2002年12月15日のInternational Herald Tribuneによると、奈良大学の馬渕りょうご社会学助教授の1998年前半朝日新聞朝夕刊の研修の結果、外国人犯罪は日本人犯罪よりも報道される可能性は4。87倍であるようです。残念ながら、殆どの外国人(98・61%)は法律を守るが、それこそ報道されないがちです。(このエッセーの後半で、私なりの犯罪統計の分析を提供いたします)
http://www.debito.org/TheCommunity/communityissues.html#miwa
http://www.debito.org/TheCommunity/ihtasahi121502.html

 この不公平・不公正な報道の仕方によって大変な「社会ダメージ」が起きました。2003年4月12日の毎日新聞によると、内閣府が行った世論調査結果は「日本に住む外国人について『日本人と同じように人権を守るべきだ』と考える人の比率が初めて50%台に落ち込み、『日本人と同じような権利を持っていなくても仕方がない』が前回調査(1997年)の18.5%から21.8%に増え過去最高となった。」なぜ内閣府が「人権擁護は任意」みたいな言い方にするのかは分からないが、世論は外国人は「人」なのに「人」権は守る価(あたい)がないようになりつつあるようです。同記事のなか、法務局の筋は「外国人犯罪の増加が原因ではないか」と。
http://www.debito.org/ishiharahikokusaika.html

 マスコミは少なくとも、外国人犯罪率と日本人犯罪率を容易に比較できます。しかし、朝日新聞本社にいる記者が書いたその記事は2003年8月に報道部デスクに渡されたが、今でもデスク留まりで保留のままのようです。

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政治の動き

 2003年9月16日、東京テレビで自民党総裁選に出馬した4人が討論しました。英字ニュースウェブサイトJapan Todayによると、2003年9月18日テレビ東京放送で皆が「外国人犯罪について」の立場を提供しました。小泉氏:(原稿は英語、翻訳有道出人)「"If foreign workers are allowed to come in at a time of high unemployment, the public will become increasingly worried about stability and an increase in crimes,"」(失業率が高い時に外国人労働者が入国すると、日本社会は安保と犯罪の増加についての心配は高まる)。同サイトによると、藤井氏は地方労働不足に対し外国人労働者の入国を真剣に討論をしないといけない、高村立候補は入国条件は日本語の能力にすべき、亀井氏は外国人犯罪の「crackdown」(弾圧)を勧めたようです。つまり、政治改革や経済促進並びに「外国人犯罪対策」が重視されるようになりました。
http://www.japantoday.com/e/?content=news&cat=9&id=273002

 同月23日小泉新内閣の発足の日で、NHKと読売新聞と産経新聞の報道によると、新政策の発表で野沢法務大臣(「首相から『日本を世界一安全な国に戻してくれ』と特命を受けた」)、江藤亀井派の国家公安委員長(「治安関係省庁と連携を取りながら、外国人、少年犯罪の強化を図りたい」)と麻生総務大臣も外国人犯罪に言及しました。要は、外国人犯罪対策の切迫感があります。


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では、外国人犯罪の統計を分析しましょう

 2003年9月、警察庁が発行した(「来日外国人犯罪の現状」 http://www.npa.go.jp にある)最新データによると、外国人犯罪の検挙数(つまり犯罪のかず)と人員数(つまり犯人のかず)は2000年と2001年に一旦低減少してから、2002年に増加しました。早く参考のために http://www.debito.org/crimestats.html

 しかし、この報告のタイトルの通り、外国人犯罪のみが載っています。外国人と外国人の比較に過ぎず、日本人の犯罪率との比較がありません。もし、きちんとそう比べて分析してくれると、以降の現象を発見すると思います:

 ●外国人の数も増加しています。法務省のウェブサイト(http://www.moj.go.jp) によると、2002年3月、登録された外国人住民(つまり、ビザの有効期限1年間以上から永住者までの外国人)は1,778,462人でした。2002年末までには1,851,758人(4%増、再び新記録)でした。人が増えると犯人も増える可能性があります。日本人の人口はほぼ横這いなので、日本人の犯罪率の方が外国人よりも顕著に増加中です。

 ●日本人の犯罪も急増中という証拠はジャパンタイムズ2003年9月23日にありました。国籍と関係なく全国の犯罪検挙数は285万件です。これは戦後最悪の記録です。同記事によると、外国人の検挙数は1。39%でした。登録している外国人の人口は1。5%なので、日本人の率より低いです。従って、犯罪があったら、98。61%の確率で、犯人が日本人ということになるでしょう。


 ●しかも、「犯罪インフレ」があります。警察庁が報告に載せた犯罪は「刑法犯」(つまりひったくり、不法侵入、強盗、殺人など)と「特別法犯」(つまりビザ違反と麻薬犯罪)に分けられて、検挙数の4分の1以上が「特別法犯」です。外国人の殆どの「特別法犯」はビザ違反です。しかし、日本人は国民なので、ビザ違反はできません。この犯罪は外国人だけが犯せるので、日本人も外国人が同様に犯せる犯罪を比べないと現実を反映しない結果がでます。ビザ違反を除けば、外国人の犯罪率は1%少々に下落します。

 ●その「ビザ違反者」の件ですが、「多い、増加中」というイメージが強いでしょう。しかし、法務省入国管理局(2003年版)の「IMMIGRATION ルールを守って国際化」というパンフレットによると、1993年から2003年1月現在に至り毎年、モレナク「外国人不法残留者」が減少しました。それはニュースになりませんか。
http://www.debito.org/crimestats.html#visa

 ●「外国人」の定義ですが、たいてい政府は「登録者」の数に例えられて、日本人口の1。5%と言われています。しかし、もし登録していない外国人(つまり1年間未満のビザのある人:即ち観光客、文化ビザ、発展途上国から来た外国人など)も含めれば、前述の保留された朝日新聞の記事を書いた記者によると外国人の人口はもちろん増加します。(一日だけでもでも出入国の人はその統計にも含まれるので、具体的にどれくらいは分かりませんが)

 つまり、登録していない数を加えて外国人数と日本人と同様に犯している犯罪件数のみを比較すれば、どれくらい非科学的な根拠でこの「外国人犯罪急増中、対策が必要」の警察庁、それぞれの政治家ましてや新内閣が助長しているのかが明らかになります。

 いささか脱線になりますが、2003年9月27日に、参議院議員福島瑞穂氏(社民党、神奈川)が東京都清泉女子大学で行ったスピーチの質疑応答の際、私はこの「外人バッシング」の問題を挙げました。議員は既にどれくらい政府が大袈裟に統計が曲解され、どれくらい外国人住民に対し不当な対応になっているのかは認識しています。しかし、議員の見解はそれほど報道されておりません。かえって、警察庁が報告する「外国人犯罪急増」の方が見出しになります。結果的にようやくこの内閣で政策まで固まるようになります。

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警察庁のこの「外人バッシング」の動機

 日本はよく「我が国は長い間鎖国し、島国であり外国人に慣れていないのでこうなるよ」と国民性によく弁解します。私は日本人はそれほど歴史の虜(とりこ)ではないと思うので、原因はエコノミクスだと思います。

 以前、私は警察庁が1999年5月に創立した「国際化対策委員会」について話しました。「来日外国人犯罪の現状(平成12年中)第2章 来日外国人犯罪対策」によると、この委員会の目的は「来日外国人犯罪に係わる諸対策及び国際情勢に的確に対応する諸対策の推進を図るため」。なぜこの委員会は「国際化」を問題化しているのか(かえって『外国人犯罪対策』ではない)は分からないが、それは措きましょう。いずれにこの委員会は前述の「不良外国人に注意」などのビラを作成する責任があります。
http://www.debito.org/chitosecopcheckpoint.html#taisakuiinkai

 これでエコノミクス。万国共通だが、公務員の部の一つの目的は自分の予算を正当化することです。もし「外国人犯罪が急増」を何度も繰り返し報道して、反論やバランスのある分析が出なければ、社会の恐怖を煽ります。結果はがっぽりとお金が出てきます。恐怖が融資に換算されると疑うなら、どうぞブッシュ政権の「反テロ措置」のあり方を研修して下さい。もしくは2002年のワールドカップの「反フーリガン措置」を振り返って下さい。(特に札幌にあったイギリス対アルゼンチンの試合の際、本州から警察官3000人を1週間導入したり、フーリガンを留置するためのフェリー3隻を借りたりして、どれくらいの予算を正当化ができましたか。従って、恐怖はおカネになります。
http://www.debito.org/worldcup2002.html

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外国人は「ソフトターゲット」である

 実は、社会問題は外国人に擦り付けやすいと思います。現代の日本では犯罪が起きれば、犯人が見付かる率は20%に落ちました。犯人は外国人か日本人であるかは分からないが、最近「このやり方は中国人みたい」が多くなりつつあります。(参考:9月中旬、私の友人が北海道支笏湖で車上狙いで被害に遭った。犯人を見付けなかったのに捜査した警察官はすぐ「中国人だろ」と言った)
 
 これも「インフレ」だと言えるかもしれないが、いずれにせよ日本人犯罪と外国人犯罪の社会待遇は全然違うと思います。「日本人がやった」と言ったら、社会の憤慨を招く可能性があり、「警察官、保安して!しっかり犯人を捕まって!」が思われがちでしょう。しかし、「犯人が外国人」と言ったら、「外国人は日本人と違うからこんな極悪な犯罪は予想しにくい。しかもどうせ我が国に犯罪しに来るなら、こっちに来るんじゃない。早く我が社会のために追放しよう。」しかし、こうやって国民を強制送還できません。しかも、外国人の犯罪は精神的にももっと注目を得ると思います。日本社会は数年間の不況を耐えていて、やがて悲嘆・悲惨・厭世感などによって他人財産の敬意が崩れてつつあり、警察庁はこの犯罪の波を99%の犯人から1%の目立つ犯人に擦り付けるのはラクでしょう。

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結論

 正直に申し上げますと、犯罪対策の必要性が論じやすいと思います。的確な政策を作成したうえ、警察官を増加してもっと取り締まりしてもいい場合がいっぱい考えられます。

 しかし、今までの警察庁の「外人バッシング」及び「外人ターゲティング」は非常に随意的だったと思います。私はよく外見のみが不審者の理由で人を捕まってハラスメントを目撃かつ経験したことがあります(2002年新千歳空港で警察官の違法停止と職務質問 http://www.debito.org/chitosecopcheckpoint.html ) よって、これからの内閣の「外国人犯罪対策」について期待を持たないのです。

 いい政策には常識が必要不可欠です。が、外国人犯罪の面で今までの我が国ニッポンには常識が欠けていると思います。一回も、「外国人も日本国住民である、しかも隣人である」という政府の発表は見たことはございません。一回も、「この不法外国人捜査や取り締まりは『人種プロファイリング』をこうやって避ける」という微妙な対策を聞いたことはございません。一回も、「外国人は平均的に日本人よりも犯罪を犯していないので、圧倒的に普通の外国人は犯人ではないので心配は不要」という通達はございません。ましてや、一回も、「すみません、私が参考にしたデータは間違ったので、失言しました。私は外国人住民に迷惑をかけたことをお詫びして発言を撤去します」を言ったハイレベルの政治家や警察官は見かけたことはございません。

 でも、これからの「対策」はこのような方々の立場を強めます。

 最後に、読者の皆様にお願いします。これから真実を知る国民としてデータもっと分析をして、公正を期した報道をしましょう。疑問を持って「この政策をするのはいいのか」と公に挙げましょう。そうしないと、「外国人犯罪の対策」は「外国人対策」に固まってしまい、「外国人お断り」などの人権侵害の動きを助長し、差別撤廃法は更に制定することが無理になってしまいます。既に国際社会日本で、他文化・習慣・外見・身元の『共生』よりも『強制』になってしまうと思います。

今が旬。宜しくお願い致します。

有道出人 著
http://www.debito.org
debito@debito.org
2003年10月7日発行
転送歓迎
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