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日本の「非国際化」の傾向
内閣世論調査
石原知事圧勝

 2003年4月17日付
 有道 出人 (あるどう でびと)著

 皆様、こんにちは。有道 出人です。最近のニュースを見てとても複雑な気持ちになり、随筆したくなってきました。このメールの形成は:

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1)ニュース:内閣府世論調査の「社会ダメージ」の標
2)外国人の犯罪率をもっと分析すると、「増加」ではない
3)なぜ「外国人バッシング」となる?
4)「非国際化」の牽制はどうする?
5)私はどうする?随筆、単行本「ジャパニーズ・オンリー」
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1)ニュース:内閣府世論調査の「社会ダメージ」の標


 先週、内閣府大臣官房政府広報室が発行した「人権擁護に関する世論調査」が報道されました。毎日新聞より:

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人権擁護:
外国人への人権意識が低下 内閣府調査 
2003.04.12  毎日新聞

 内閣府は12日付で「人権擁護に関する世論調査」の結果をまとめた。日本に住む外国人について「日本人と同じように人権を守るべきだ」と考える人の比率が初めて50%台に落ち込み、「日本人と同じような権利を持っていなくても仕方がない」が前回調査(1997年)の18.5%から21.8%に増え過去最高となった。外国人に対する人権意識の低下ともいえ、法務省は「外国人犯罪の増加が原因ではないか」とみている。

 調査は58年から4〜7年ごとに行われ、今回が9回目。全国の成人3000人を対象に今年1月30日から2月9日まで実施し、2059人から回答を得た。

 「日本国籍を持たない人でも、日本人と同じように人権を守るべきだ」と考える人は54%で、前回の65.5%から11.5ポイント減少した。初めて調査した88年から前回までの計3回では「日本人と同じように権利を守るべきだ」との「擁護派」がいずれも60%台を占めていた。

 一方、人権問題で関心があるものを聞いたところ(1)障害者44.6%(2)高齢者35.2%(3)子ども30.8%(4)インターネットによる人権侵害27.7%(5)犯罪被害者等27%(いずれも複数回答)――が上位を占めた。

(http://www12.mainichi.co.jp/news/search-news/875450/8aO8d9190l-0-4.html)
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 その世論調査の原文はここで見られます。
http://www.debito.org/jinkenreport0403.html

 つまり、日本社会在住の人々の一部分が「人権を与えなくても仕方がない」と言っている人が多くなりつつあります。私にとって、「社会的ダメージ」であります。「同じ人間に同じ人権を」の当然論なのに、なぜ「他国籍ならば同様にできない」と思われがちでしょうか。

 私なりの意見ですが、原因は最近「外国人バッシング」の多しによると思います。

 上記の記事でも言及されましたが、「法務省は『外国人犯罪の増加が原因ではないか』」と思われています。が、外国人の犯罪が「増加」していますか。


2)外国人の犯罪率をもっと分析すると、「増加」ではない。逆です。


 具体的に外国人犯罪率を見てみましょう。 http://www.debito.org/crimestats.html では、「来日外国人犯罪の現状1992-2001年度の統計」(警察庁来日外国人犯罪等対策室 発行)が載っています。犯罪の件数・人員は増加もあるが、低下もあります。特に、00年と01年では、犯罪件数が相次いで低下しています。ひいては93年より現在に至り、犯罪を犯す人員数はほぼ横這いです。

 しかし、その情報は知らされていないことが多いです。広報と報道などは所々を注目して「『この犯罪』が増えています」のみを指摘して、低下した犯罪またはその傾向はニュースにならないがちです。極例で、新聞も捏ち上げることもありました。産経新聞00年5月1日1ページに「外国人犯罪再び急増、10年に6倍に」とも報道しました( http://www.debito.org/TheCommunity/sankei050100.html )

 しかも、警察庁からの情報はそのまま報道され分析は足りなかった部分があります。例えば、


 無論、外国人による犯罪が増加しました。しかし、外国人の人口も増加しました。日本人の人口はわりと増加したかったものの犯罪件数も増加したのは事実です。だから、率の増加があれば日本人側にあります。なのに、なぜ外国人の犯罪のみが強調になってしまったのか。


3)なぜ「外国人バッシング」となる?


 「バッシング」という言葉は誤解を招くかもしれませんが、私の意味をしたいのは、「不適当に人を問題の原因にする行為」です。誰がそういうことしているのですか。まず、日本警察庁の行為を見てみましょう。

 日本警察庁は「外国人犯罪急増」の定期的な報告は行っています。私の記憶では、00年の春、01年の春秋、02年の秋の新聞とテレビの報道が多かったのです。報告のみではなく、それぞれの署(例えば三鷹、渋谷、新宿、中野、長野、静岡、上野 http://www.debito.org/TheCommunity/communityissues.html#police )は「防犯措置」として公共施設(地下鉄、鉄道の駅、銀行など)でチラシを貼付けています。「来日不良外国人によるひったくり事件が多発」、「不審が外国人から声を掛けられても、現金やカバンから目と手を放さないように」「来日外国人犯罪の特徴」などを公表しています。しかし、この措置は現実を反映しておりません。例えば、02年10月1日、中野警察署は電話で中野区内の外国人ひったくり件数は「把握しておりません。資料をもっておりません」と言いました。( http://www.debito.org/TheCommunity/nakanohittakuri.html#nihongo ) よって犯罪のない場所でも警察は「多発」と言っています。

 それに、外国人も犯人容疑でよく狙うケースもあります。私のみの経験より申し上げると、空港、ストリートと自転車乗り(羽田国内線、千歳、小樽、すすきの、神田)で理由なしで警察に停止され職務質問されたことがあります (英語: http://www.debito.org/activistspage.html#checkpointshttp://www.debito.org/japantimestokyobikes.html )。帰化しても「あなたは外国人みたいだから、パスポートを要求するのは仕方がない」という扱いにもなりました (http://www.debito.org/chitosecopcheckpoint.html) 職務執行法違反であっても道警察は謝る必要がないと言われました。とにかく、国籍を問わず皆をチェックすると、もちろんうちにいる不審者を見つけられて犯罪率が上がります。しかし、日本人をこうやってチェックできないため、外国人みたいな人を狙ってチェックすると、当然不審者人を見付けます。でも、それで「犯罪率増加」と公平に言えますか。しかも無実の人に迷惑をかけたり、理由なしに人を捕まることの正当化にはならないと思います。

 なぜ警察はそこまでするのでしょうか。経済的な要素もあると私は思います。99年5月、警察庁は「国際化対策委員会」を「来日外国人犯罪に係わる諸対策及び国際情勢に的確に対応する諸対策の推進を図るため」に成立しました ( http://www.npa.go.jp/kokusai2/h12/contents.htm )。 活動するためにもちろん金銭的な問題が生じますので予算を確保します。実は(最近のアメリカの政権が最も分かることだが)、社会的「恐怖」はひとつの手段です。例えば、2002年のサッカーのW杯の時に、「フーリガン」についてよく恐怖が広がれ、警察の予算(特に札幌のイギリス対アルゼンチンの試合に対する警戒を鑑みて (http://www.debito.org/worldcup2002.html) )がぐんと上がりました。「外国人に対する警戒が必要」と「反テロ措置が必要」には共通点があります。

 しかし、警察庁のみの行為ではありません。政治家も時々外国人恐怖を煽る発言もします。例えば、宮城県議会において01年6月29日定例会では、議員今野隆吉氏はW杯をめぐり「異常な雰囲気に包まれて内外人レイプによる不本意な赤ちゃん出産までが問題になっております」と言われました。(http://www.2002rifu.net/problem/prb-hooligan2.html)

 一番有名なケースかもしれませんが、石原東京知事は経過した4年でよく外国人を天敵扱いしました。産経新聞連載の「日本よ」(01年5月8日)で、彼は中国人の「民族的DNA」について話し、特に「民族的DNAを表示するような犯罪が蔓延することでやがて日本社会全体の資質が変えられていく恐れが無しとはしまい」、かつ「新宿、池袋、あるいは六本木(中略)には日本の暴力団々員さえもが辺りをはばかる」。よって、予算が出て、02年2月から東京都は歌舞伎町では24時間の防犯カメラが設置されました。00年4月9日、練馬陸上自衛隊への「三国人スピーチ」で、石原氏は「不法入国した多くの三国人・外国人が非常に凶悪な犯罪を繰り返している。もはや東京の犯罪の形は過去と違ってきた。こういう状況で、すごく大きな災害が起きた時には大きな騒擾事件すらですね、想定される、そういう現状であります。こういうことに対処するためには我々警察の力をもって も限りがある。だからこそ、そういう時に皆さんに出動願って、災害の救急だけではなしに、やはり治安の維持を」と勧めました。但し、どうやって執行する自衛隊が「不法入国外国人」を見掛けのみで分かるのか、しかも外国人によるこうした騒擾を起した史上前例のない事実を説明していただきませんでした。

 (この時点で申し上げますが、私は石原氏についての感想です。彼のスピーチと考え方は普通の日本のリーダーと違い、非常にリフレッシングだと、正直に同感する意見が多いです。しかし、彼は一方的に「外国人バッシング」に訴えることではなく、とたまに「外国人も住民および納税者であり、色々な社会的貢献もしている」を認めればどうでしょうか。彼はもっとバランスを保とうとしたら、もっと評価されるのではないかと思います。)

 結局、先週日曜日の知事選の結果は石原氏の圧勝でした。4月14日、午前7時のNHKニュースで、石原氏は最初に話したのは東京都の「治安」について、そして「国民」の不安の反響で彼が当選したのでは、などを言いました。すぐ「国民」と「非国民」の線引き。これを見た私は不安です。これくらいの楽勝なら彼はこのスタンスの正当化だと感じるのでは、と思いませんか。これからの石原氏は少しでも日本の国際化を反省しなくても結構だと心配しています。


4)「非国際化」の牽制はどうする?


 上記の世論調査に戻りましょう。人権に係わる当局は法務省人権擁護部です。先日、世論調査のコピーをいただくために札幌支社におじゃまして原口氏と新庄調査救済係長と話合いました。私「この傾向はどういうふうに牽制しますか。調査の結果にもよると、たいていルーラルの住民、お年寄りの方が『権利を持っていなくても仕方がない』回答する傾きが強いです。教育や社会的啓発が必要な様である。当局はどうしますか。」

 返事は「検討中ですが、いままでの啓発活動や意識高揚する手段を続きます」。彼らは近くにあったポスター、パンプレットなどを指示しました。部落民差別、アイヌ差別、人種差別撤廃条約などについて情報がありました。が、どこでも、例えば、「外国人がゲストではなく、日本人と同じ住民、将来的に国際化をめぐり人種的に日本離れの特徴でも日本人である」のような寛容性を助長する案内はありません。しかも、内輪の話しでもそれほど有望でありません。「人権擁護部委員制度の改革について」(01年12月21日、人権擁護促進審議会 発行)の5ページで、「我が国に定住する外国人が増加していることなどを踏まえ、市町村の事実に応じ、外国人の中からも適任者を人権擁護委員に選任することを可能とする方策を検討すべきである」に止まりました。即ち、まだまだ『検討』の段階で、未だに決定または既成事実ではありません。要に、どこまでこの人権を擁護することが委ねてある当局は執行するのか、分かりません。

 (またこの時点で問いたいと思いますが、なぜ世論調査は外国人は『日本人と同じような権利を持っていなくても仕方がない』という質問を出しますか。人間には人権を与えるのは任意ですか。一義的ではありませんか。これは「参政権」等の国籍をめぐる権利ではなく、最低限の日本国憲法で保護されている人権、少なくとも生活水準・人生を送る最低限(買い物、サービス業界アクセス、賃貸など)、についての話しです。それさえ今現在の日本立法では保護されておりません。)

 皮肉に思いますが、法務省の人権意識を問います。上記の毎日新聞記事の中で、法務省は『外国人犯罪の増加が原因ではないか』と逆に誤りを助長しています。これは社会的啓蒙だとは言いがたいです。

 ですから、日本の行政官と立法府は外国人の人権を保護しなければ、私たち国民または外国人も自分の人権を主張しないといけないと思います。


5)私はどうする?随筆、スピーチ、単行本「ジャパニーズ・オンリー」


 私個人は国民としてと元外国人として、このような社会問題についてよく書いて発言したいと思います。だから私の感想を随筆してこのメールを送信させていただいております。それに、小樽の温泉問題、外国人お断り入浴施設について単行本(明石書店出版)を書きました。タイトルは「ジャパニーズ・オンリー」で、日本語です。 (http://www.debito.org/nihongo.html#JObook) エッセーではなく、ストリーとして取り組んでおります。何があったのか、どんな活動をして成功と失敗があったのか、日本の救済制度はどうか、などをまとめて書きました。私の結論は、『人権』はこのような「世論調査」や「ポプラーコンテスト」によって与えることではなく、法的に確保する権利です。社会的にもっとそう思っていただきたいのです。そして、他の取上げたい社会問題と勧めたい解決策は「『国際住民』に対し21世紀の日本・地方自治体のあるべき姿」の案内サイトにあります。(http://www.debito.org/nihonnoarubekisugata.html)

 益々日本の国際化が進展しつつあるのに、それぞれの人は無理矢理して危機感を感じさせています。外国人が来ることをめぐり悪いこともあるだろうが、もちろんいいこともあります。それどころか、我が国の高齢者社会は移民、住民、社会に貢献する「新人」も必要です。小渕恵三首相の委嘱による「21世紀日本の構想」は同意です。00年1月18日発行したレポートのなか、「日本社会の発展への寄与を期待できる外国人の移住・永住を促進する、より明示的な移住・永住制度を設けるべきである」(http://www.kantei.go.jp/jp/21century/index.html) を唱えてあります。国連も00年、日本の高齢化を牽制するために「毎年600,000人の移民者が必要」とも報告しました。
(http://www.guardian.co.uk/population/Story/0,2763,531074,00.html) 。国際化は必然的なことです。

 その現実を鑑みて適した「国際化対策」を採らないといけないのです。皆様、我が国の「啓発」の活動も草の根かもご検討下さい。そのため、たまに機会があれば、ご自分の声でも「外国人などは『共住』しています。人権を守るのは当然だ」と柔らかく挙げていただけませんか。マスコミの方々も、データーもっと分析して報道して、現実、特に外国人の犯罪増加の誤報、を訂正して知らせていただけませんでしょうか。

 宜しくお願い致します。有道 出人

 2003年4月17日付

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http://www.debito.org/nihongo.html
ENDS

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