(共同通信の記事)

 お気に入りの北海道・豊平峡温泉で「温泉好きに国境はない」と入浴を楽しむ有道出
人さん=札幌市南区

2001.07.13  17:20配信

◎ 娘が差別されない社会を  外国人入浴拒否に反発

 「外見で拒否するのは人種差別」と入浴施設を訴えた米国出身で白人の大学講師有道
出人(あるどう・でびと)さん(36)=北海道南幌町=は、混血の娘を差別のない環
境で育てていけるのかと悩んでいる。昨年十月、有道さんは日本国籍を取った。日本人
の妻との間に五歳と七歳の娘が二人。二女の髪はくり色だ。
 「いつも一生懸命な日本人がリラックスしている風景が好き」。十五年前、義理の父
に連れられて入浴して以来、大の温泉好きになったという。
 二年前、家族と北海道小樽市の入浴施設を訪れた際、自分だけでなく、日本人離れし
た容姿の娘も大人になったら拒否されるだろうと言われ、ショックを受けた。
 北海道では入浴施設に限らず、ロシア船員とのトラブルを理由に外国人を閉め出す店
が後を絶たない。「何もしなければ、娘が将来、多くの店で排除される」という危機感
が、差別禁止を求める運動の原動力となった。
 「ふろ論争」は海外メディアも取り上げ国際問題に。有道さんと話し合いを重ね「外
国人お断り」の看板を下ろす施設も出てきた。
 国や小樽市は人種差別と認めながらも、強い指導はしない。有道さんは「罰則規定を
含む人種差別禁止法が必要」と国会議員などに陳情を重ねたが、外国人には参政権がな
い。
 「永住外国人は税金を払って社会に貢献しているのに不公平。選挙権があれば、候補
者も外国人の言葉に耳を傾けるのに」とため息をついた。
 昨年の衆院選では入浴拒否と人権の問題を考えてもらおうと、各党にアンケート。結
果は人種差別禁止法について民主、社民が積極的、自民、自由が消極的。公明、共産は
「検討したい」だった。
 民主は今年六月、人権基本条例を道議会に提案すると発表。参院選で初めて選挙権を
手にする有道さんは「比例は民主に入れる」と意気込んでいる。
 一人の女性が生涯に産む子供が平均一・三五人まで減少する中で、国際結婚は年三万
組を超える。
 有道さんは「日本が今の経済力を維持するためには、さらに多くの外国人労働力が必
要。外見が違っても一緒に暮らせる社会を」と訴えている。
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