読売:検視は「病死」、解剖で「脳挫傷」判明…急死の米男性

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検視は「病死」、解剖で「脳挫傷」判明…急死の米男性
2008年1月29日03時11分 読売新聞
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20080128-OYT1T00657.htm

 福岡市中央区の自宅マンションで2004年、急死した米国男性の死因について、福岡県警中央署が側頭部にこぶがあったのに当初は司法解剖せず、検視だけで「病死」と判断し、遺族の要望による解剖で「頭部打撲による脳挫傷」と判明したことがわかった。

 解剖を受けて、県警は「転倒による事故死」と判断を変更。遺族は納得せず、解剖鑑定書などを見せた法医学者から「他殺の疑いがある」との回答も得て、30日に県警本部を訪れて再捜査を求める。大相撲・時津風部屋の力士急死事件などでも問題となった検視・解剖のあり方がまた問われそうだ。

 死亡したのは、マシュー・レイシーさん(当時41歳)。1988年に初来日、ビジネスに役立てるため、当時は市内で日本語を専門的に学んでいた。県警によると、04年8月17日、マンション6階自室のベッドの上で、裸で倒れて死んでいるのを友人らが見つけた。

 県警は実況見分などから侵入者や争った跡はないと判断。過敏性腸症候群で通院し、隣の台所の床に排せつ物がわずかに点在していたことから、警察医の見解も聞いて、死因を「下痢と脱水症状などによる病死」として、遺族にも説明した。死亡したのは8月11日ごろとされた。

 検視では、左側頭部に鶏卵大のこぶを確認していたが、「軽度」として司法解剖しなかった。

 しかし、遺族は「急死は不自然」などと、県警に承諾解剖を依頼。遺体発見2日後に解剖が行われ、こぶを中心に長さ約20センチの亀裂骨折と脳挫傷が見つかり、「平らで重量のある物体との衝突」による頭部打撲が死因とわかった。

 県警は手続きを司法解剖に切り替え、現場検証なども実施。台所の床がコンクリートにカーペットを敷いただけだったことなどから、「台所で転倒して床に頭を強打、ベッドに移動後に死亡した」と結論付けた。

 一方、遺族は、床に血痕がなく、玄関の鍵もかかっていないことから疑問を持った。「真相を知りたい」と、解剖鑑定書や捜査資料の開示を請求した。だが、公開制度が確立していないこともあって、福岡地検に閲覧が認められたのは3年後の昨年7月だった。

 遺族は、接写撮影した頭部の写真などを含む鑑定書などを、上野正彦・元東京都監察医務院長やニューヨーク市の監察医に送付。2人とも〈1〉転倒でこれほどの重傷を負うことは考えにくい〈2〉耳や鼻から出血があり、移動すれば血痕が残る〈3〉三半規管付近の強打で、平衡感覚を失って歩けないはず――とし、「ベッドが死亡場所と推測され、他殺の疑いがある」と指摘した。

 上野氏は本紙の取材に同様の見方を示し、「私見だが、事件の可能性が否定しきれない」とした。

 県警は「一連の捜査手順は適正。現場の状況などを総合的に検証して事件性なしと判断し、遺族にも説明している」としている。

 ◆「真相解明を」あす再捜査要求◆

 「警察の捜査は結論ありきとしか思えない」。マシューさんの兄チャールズさん(46)は「解剖に消極的な対応は、アメリカでは考えられない」と話し、日本の死因究明制度の不備を強く感じている。

 名古屋市で英語講師をしているチャールズさんが弟の死を知ったのは、帰省中のニューヨークの実家でだった。福岡県警中央署員が国際電話をかけてきて、「下痢と脱水による病死」と説明した。しかし、チャールズさんは「腸を患っていたとはいえ、急死は不自然」と思い、「解剖をお願いしたい」と県警に伝えたという。

 後日、弟の部屋を訪れると、ベッド上の遺体の頭の周辺にのみ、大きな赤黒いしみがあり、「寝ている時に誰かに襲われたのでは」と感じた。米国では解剖結果が原則として公開されている。日本では、解剖鑑定書などの裁判前の公開は原則として禁止され、事件性がないとされる場合でも公開は特例的だ。チャールズさんは「真相解明は困難かもしれないが、しっかりと死因を調べてほしい」と話す。

(2008年1月29日03時11分 読売新聞)

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